五條悟と時渡るJK〜過去いま運命論〜(dream)

□19-恐怖の大王とJK
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 最上階へ辿りついて、屋上への扉の前に立つアミ。

 鍵がかかってるから、このまま屋上に出るのは無理。
じゃあ鍵は何処にあるのかって思うよね。

 アミは、ドアノブの所にぶら下がってる暗証番号式のキーボックスへ手を伸ばす。この中に屋上の鍵が入ってるんだよって。

 6桁の数字が必要な暗証番号なんだけど――もちろんアミはゴロ合わせをオジサンから聞いて覚えてた。

――072354(オナニー最高よ)……

 数字をあわせると、カコンッ――って、キーボックスが開いた。

――マジ、しょうもないパスワードだなぁ……

 中から鍵を取り出して、屋上扉のカギ穴にさして回す。
 ガチャッ、と扉が開いたのを確認して、アミは鍵をキーボックスに戻した。
 
 こうすると鍵は開いてるんだけど、パッと見て異常がないように見えるから、巡回に来た警備員さんを誤魔化せるんだって。

 細工を終えたアミは屋上に入る前にゴルフバックを下ろす。

――こっからが本番なんだよねぇ…

 ジッパーを開けて中に入ってたエアガン全部にBB弾を装填する。
 動作確認をすませると、すぐに取り出せるようにジッパーを開けたまま担ぐ。
 すぐに反撃がしやすいマシンガンを手に持って、アミは屋上への扉を押し開いた。



 屋上へ出ると霧が広がってた。
 
 扉を背にして、アミはゴルフバックを地面に置く。
 マシンガンを構えて、まずバケモノがどこにいるか探そうとした時だった。

「うぎぁぎぁぎぁぎぁぃぁうぐぁ……」

 呻くような声が聞えるって思って見たら、アミの斜めうえをメッチャ大きなバケモノがとんで行くのが見えた。

「!」

 反射的に持ってた武器をバケモノに向けるけど、バケモノはアミに気が付かずそのまま泳いで行く。

――あれ、思ったよりはバケモノも雲も遠いかも?

 屋上には霧が広がってるけど、バケモノが泳いでる雲はもう少し上にあった。
 下から見たとき、もっと雲の中に屋上があるかと思ってたのに。
 
――でも、この距離なら問題ないかな

 さっき通りすぎたバケモノの距離はアミの位置から30〜40m。
 マトは見た通り大きいから狙い撃ちしなくても当たるし、むしろ外すのが難しいくらい。
 アミ、狙い撃ちが苦手だから楽勝な相手で助かる。

 ミドリちゃんをかけてるおかげで、暗くてもバケモノの位置はよくわかる。
 
 アミはライフルを取り出して精密射撃の準備に入る。
 準備の間に超大型のバケモノの泳ぐルートを確認してたら、バケモノの泳ぐ範囲が狭い事に気がついた。
 
 地上では渋谷の町の上をバケモノが泳いでるように見えた。でも今は同じところをグルグルしてるようにしか見えない。

――だれか、目隠しカーテンか、バリアーでもしたのかな?

 目隠しカーテンやバリアーをすると、バケモノの動きが制限できるんだよね。

 ごじょーさとるが起きたとか? それとも他のヒーローが来てるとか? そしたら、アミ何もしなくて大丈夫かな? ――とか思うけど、バケモノは早いうちに倒しましょー、がモットーのアミだから、やっぱり自分でやれる所まではやってみようって思いなおす。
 
 転落防止の結構高い作を乗り越えて、ライフルを設置して座り込む。 
 バケモノが襲ってきたときのための反撃用のマシンガンを傍に置いておく。

 ライフルのスコ―プ越しにバケモノを見つめて、アミはバケモノの事を分析する。

 敵は「のすとらだむすの大予言」の「恐怖の大王」。
 それを信じた馬鹿な人たちが呼び寄せたバケモノ。

 不思議な力の効果は、よくわからない。
 でもアイツのせいで、地上にいた人が倒れたり混乱したりしてるみたい。
 だから、強いバケモノではあると思うんだよねー。

 ただ、“めっちゃ”強いバケモノなら、ハメワザ使うのにアミの事をまっさきに襲って来るはず。
 それがないって事は、あのバケモノは“めっちゃ”強くはないという事になる。

 つまり。あのバケモノは“そこそこ”の強さのバケモノで、ギリギリ、アミでも1人で倒せる!!...と思う。

 あとは、アミがバケモノの体力を削りきれるかと、襲われないかが勝負になる。

――アミが疲れてギブアップか、そっちが退治されるか勝負だね!!

 アミは引き金を引き絞った。
 カシュッ――エアガン特有の乾いた音か響いて、アミの撃った弾がバケモノにあたる。

 パァンッ――シャボン玉がはじけるように、着弾した所から破裂した。
 
「うぎぁぎぁぎぁーーーー!!!!!」

 バケモノは、残った部分を大きく蠢かせて激しく暴れてる。

 下に落ちなくて良かった、でも気持ち悪いなー。早く消えてよね!ーーって思いつつ、アミは次の弾が装填されてるのを確認して、もう一回引き金を引いた。

 苦しむようにもがくバケモノの動きは早かった。
 だけど、削れたって言ってもマトは大きいまま。問題なくアミの攻撃が当たる。

 パァンッ――シャボンがはじけるように、またバケモノの体が破裂する。

「……えっ」

 と、ここでアミは驚いて固まっちゃった。

 今までアミの目の前にいて、渋谷の空を泳いでた超大型のバケモノ。――が、黒いススを残して消えてった。

 その消え方は“バケモノを退治終了後”の消え方と一緒だった。
 ミドリちゃんで確認するけど、バケモノの痕跡はあってもバケモノ本体は何処にもいないみたいだった。

「ハッ? ウソっ、弱すぎじゃん…」

 2発で退治できてしまった見掛け倒しのバケモノに、アミはあいた口が塞がらなかった。




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